2007年 07月 12日
映画<モーターサイクル・ダイアリーズ>、戸井十月氏の著作などを読んでいて、いつかキューバの映画、とくにあの時代の映画を映画館で観たいと思っていたのだけれど・・・やっと!その夢が実現しました! 1968年にキューバの巨匠、トマス・グティエレス・アレア監督作品の<低開発の記憶ーメモリアスー>です。 この映画の舞台は1958年にキューバ革命が成功した直後の1961年から62年にかけてのハバナ。ドキュメンタリー映画などでは度々目にしてきた革命後のキューバの様子をブルジョア階級のセルヒオというひとりの男性の目をとおして観る事ができます。 家族はみなマイアミに亡命してしまい、小説家を目指すセルヒオはひとり、妻とのやりとりを録音しておいたテープに聞き入ります。 まず驚いたのが洗練された力強い表現力。 主人公がブルジョア階級という設定なので、激動する情勢に流されてゆく主人公のニヒルな視点から物語りは語られます。 この主人公はインテリを自覚し文学や芸術などを理解せぬ異なる環境下のキューバ人たちを低開発であるとしてそこから距離をおいています。激動する社会をよそに労働をえらばずただ浮遊しているかにみえる主人公は、いかにも金持ちのインテリという風にもみえますが、なんせ時代が時代なのでその所在無げな彼なりのドタバタ(若い美しい女性エレナに手を出し後腐れの悪い終わり方をする・お手伝いの女性にあらぬ妄想をいだく)や、やるせない横顔が次第に気の毒にみえたり共感してしまったり・・・。主人公を演ずるセルヒオ・コリエリはキューバのブルジョワ階級出身ではないとのことですが、かなりはまり役でみていて嬉しくなりました。 ピッグス湾事件(1961年4月17日にアメリカCIAを後ろ盾として組織された亡命キューバ人たちおよそ1350人がピッグス湾面するヒロン海岸に上陸した事件)についても触れられ、反革命軍たちが旧政権下の軍人、大土地所有者、実業家、学識者などで構成されていたことにも触れられています。中には民間人に虐殺や拷問を行ったものたちも含まれていたそうです。 アメリカとソ連は一触即発の状況になり核の恐怖がキューバを中心に世界全体を覆っていたあの頃、かつての幼馴染の家が新政府に没収され、軍の所有物となり主人公セルヒオはなすすべもなく戦車の隊列を窓から眺めます。 過去の記憶が呼び覚まされ、まだ38歳のセルヒオは自らの人生を振り返ります。 むなしい空虚な現在。 緊迫感と退廃。 キューバ革命のその後を、実際に体験したスタッフたちがつくりあげたドラマ。 今までのキューバに思い描いていたのとは全く違う映像を観る事ができとても面白かったです。 コマンダンテも観たい・・・
by EKreidolf
| 2007-07-12 11:06
| 映画
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