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Lenzgesind

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2011年 09月 08日

コンタンポラン。

 この夏、むすめたちがイケメンパラダイスに夢中です。
とはいっても今放送のフジテレビのドラマのほうではなく、東海地方で再放送されてる
2007年の水嶋ヒロくんとか生田斗真くん出演の方みたいなんですけど。
ママは誰がいいの~?って聞かれますが、ん~~。
自分でも、もう生誕150周年を迎えようとしてるクライドルフをおっかけてるとなんか落ち着くんですが、
これっておかしいのかなあ、とも思います。韓ドラもよく知らないし。



 かねてから、クライドルフの詩集、『花と妖精の絵本』3部作の邦訳をなさった矢川澄子さんは
どうして小さな銀の鈴を振るような、美しい詩の翻訳ができるのか不思議でたまらなかったのですが、
彼女の読書遍歴を振り返ると、高校生時代からあの明治の文豪、森鴎外の影響を強く受けていらしたようで、
彼女自身、『於母影』や『即興詩人』などの鴎外訳を暗記するほど読みふけったと述懐していらっしゃいます。

 以前ちょっと触れさせていただいたように、森鴎外の著作については苦手意識が強く、
あまり触れることもなかったのですが、この夏長女が歴史に興味をもつようになり、読んでみました、
『阿部一族』と『渋江抽斎』。
もうこれが面白くて面白くて。
特に『渋江抽斎』などは姿勢を正して執筆活動をする鴎外先生の、
嬉々とした高揚感がうかがえたり、次女の杏奴さんに浴衣を着せて神田の古本屋にでかけた、
という杏奴さんの随筆を思い出し、孤独を愛した鴎外がまるで古い級友の面影を求めるかのように、
資料を探しだしほくそ笑むといった姿が浮かんできたりで、
今まで遥かかなた遠いところにいた明治の偉人が少々身近に感じられ、嬉しく思われました。

ところで鴎外氏の年表を振り返れば、彼が軍医としてドイツはベルリンに派遣されたのは
1884年8月のことです。
さらに、1886年3月にはミュンヘンに移動し、約1年ほどの間大学衛生部で研究に従事します。
このころ・・・そうです、エルンスト・クライドルフはミュンヘン王立アカデミーで画家になるべく切磋琢磨していた時代です。

出生年をみれば鴎外、森林太郎は1862年2月17日生まれ。
クライドルフの1年年長(1863年2月9日生まれ)となります・・・
そう、鴎外氏はクライドルフのまさにコンタンポラン(仏語:同時代の人)にあたります。あ、星座は同じ水瓶座だ・・・



 森鴎外、ミュンヘンといえば・・・そう、『うたかたの記』。
あのバイエルン王、ルードヴィヒ二世の謎の死に
インスピレーションを得て書かれたとされる作品ですけれど、
ここに出てくる主人公マリイの恋人、巨勢。
この若い画家のモデルとされているのが鴎外の友人であった原田直次郎です。

原田直次郎は出生年もクライドルフと同じ1863年生まれ(原田氏は10月12日生まれ)。
この方についてウィキで調べてみると、
1884年、21歳でドイツに渡り、兄豊吉の友人画家ガブリエル・マックスに師事し、ミュンヘン・アカデミー(美術学校)に聴講生として登録。私費留学中は、ドイツ官学派の手厚い写実を身につけ、同時にドイツ浪漫派主義の作風に影響を受け、世紀末趣味にも強い関心を示した。またミュンヘンでは、陸軍省派遣留学生の森鴎外や画学生ユリウス・エクステルと交友を結ぶ。
とあります。
すなわちクライドルフと全く同時期に同じミュンヘン王立アカデミーに通っていたということになります!

思い出すのは、『渋江抽斎』の中のこの一節、
若し抽斎がわたくしのコンタンポランであったなら、二人の袖は横丁の溝板の上で擦れ合った筈である。ここにこの人とわたくしとの間に馴染が生ずる。

鴎外が官僚でありまた医師でもあり収集家としてもよしみを感じていた抽斎。
同時期に画家をミュンヘンの地で志していた直次郎とクライドルフ。
彼の名はもちろん友人として原田直次郎や鴎外の著作に出てくることはないのだけれども、
実際に二人の袖はミュンヘンで(たとえ物理的にだとしても^^;)触れ合ったことがあるのやもしれず、
目が離せないのでありました・・・

ミュンヘン時代クライドルフと親交があった、Cuno Amiet とかWilhelm Balmerについても
調べてみようかと思います。




森茉莉さんがこの『渋江抽斎』などの史伝を父が出版するにあたって、
いつの間にか父は古本くさくなってしまった・・・と嘆いていたのは面白かった。
彼女は父にいつまでも欧州の香りをぷんぷんさせていて欲しかったのだろうか・・・
たしかに抽斎の嫁、五百の話などは読むのがつらかったろうなあ・・・


by EKreidolf | 2011-09-08 15:41 | 読書


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