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2007年 03月 23日

ルートヴィヒ 神々の黄昏

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月王ルートヴィヒ。
アポリネールは彼をそう呼びました。
 
<ルートヴィヒ 神々の黄昏>は巨匠ルキノ・ヴィスコンティのドイツ3部作(ナチス、トーマス・マン、そしてルートヴィヒ)のひとつ。最近テレビで放映してくれました。
ヴィスコンティの映画のなかでも、ルートヴィヒが即位したころの映像は最も美しいシーンのひとつ。シシィが当たり役、ロミー・シュナイダーとヘルムート・バーガーの超美形二人に、ため息がでるほど。
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 しかし王の血筋は、美しさとともに狂気をもはらんでいました。
民衆を顧みることなく、自らの世界に耽溺してゆく王。
シシィの妹ゾフィーとの結婚が延期、さらには中止されたあたりから
王の日記は苦渋に満ちた、告白と懺悔にみちてきます。

 この映画、なんという絢爛豪華さ。
ノイシュバンシュタイン城には北欧の神話やワグナーのオペラの壁画が描かれ、特注でつくらせた青い球体の電球が王の寝室を照らします。
 リンダーホーフ城の地下にあるあの人工洞窟のタンホイザー。
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他人を寄せ付けず、人工美を愛したルートヴィヒ。
しかしヴィスコンティの眼はなんと王にやさしい視線をなげかけていることでしょう。
次第に肥え太り醜くなってゆく王。
バーガーのルートヴィヒはそれでもなお、凄烈で美しいといえるでしょう。
王の日記によれば、現実のルートヴィヒはその肉体が腐敗し、臭気を放っていたのではないか、と思わせるほどの凄まじさです。


ルートヴィヒの死には多くの謎。
ルートヴィヒの亡くなったシュタルンベルグ湖には死後、霊をなぐさめるためか、ルートヴィヒの名の刻まれた十字架が立てられています。
(しかし実際の遺体発見現場は、十字架の位置とはわずかに離れたところのようです。)

彼の孤独な死、そして湖の十字架を思いだすたび、カスパール・ダーヴィッド・フリードリッヒの<リーゼンゲビルゲの朝>という画を連想します。

わたしは謎でいたかった、と独白を残した王。
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by EKreidolf | 2007-03-23 13:51 | 映画


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