カテゴリ:映画( 40 )


2012年 10月 10日

秋の夜、あれこれ


 
 ふ~~、育児ストレスか頭がぼ~っとするので思いつくまま。
そういえばいつも慰めてくれる十五夜のお月さまを今年はみのがしちゃった・・・


 画像はメリエスの『月世界旅行』。
月へ向かおうとする人々の旅行記ってちょっと珍妙な面白さがある。
日本のかぐやひめは竹から現われるし、シラノ・ド・ベルジュラックの旅行記は現代からすると
珍妙過ぎて痛快だし。
ヴェルヌ、メリエスに続いてはカレル・ゼマンに『ほら男爵の冒険』があった。
なんかストレスがたまったとき、やめらんない、SF。



チェコのカレル・ゼマン『ほら男爵の冒険』(1961年)。
原作者はベルトールド・ビュルガー、実はエーリッヒ・ケストナーの偽名。
ナチも協力してヨゼフ・フォン・バキ監督によってこの物語がドイツで映画化された1943年当時、
反ナチのケストナーの本は発禁処分であったため、この事実を知ったゲッペルスは憤慨したという。
1943年のドイツ、バキ監督バージョン。





 SFといえばずっと『メトロポリス』の監督、フリッツ・ラングについては誤解してたみたい。
紀伊国屋のDVDに付属していた解説で、ラングは妻で作家のテア・フォン・ハルボウが
当時ナチに傾倒しすぎたために離婚したようなことが記述にあったように思う。
ちょっと前に新装版ででた創元推理文庫『メトロポリス』の解説では
最近の研究でわかったことが詳細に描かれていて、
ハルボウばかりが心酔したわけでなく、ラング自身も保身のためか
当時ナチの宣伝担当であったゲッペルスに作品を持っていったり
いくばくかの交流があったようで、完全に被害者扱いはできないよう。
ラングもユダヤの血が流れていたわけだし、当時の社会情勢を考えれば無理もない話だけど。
(そうしてみると他人が知りうるわけもなかったわけだけど、あの時代のドイツに
ユダヤ人の医師を父に持ったエーリッヒ・ケストナーの物凄さがよくわかる。
彼がドイツに居住するだけでヒトラーをあざ笑ってた。)


 さて、春に長女と観に行った映画『ヒューゴの不思議な発明』。
スコセッシ監督と思えないノスタルジーかつ遊び心満載な映画でした。
からくり人形(オートマタ)の造形は『メトロポリス』のマリアを彷彿とさせるし、
図書館の館長がクリストファー・リーなんて泣かせる。
もっと怪奇的な恐ろしい(ドラキュラ伯爵のような^^)リーの姿も観たかったかな。
でもリーは実は『指輪物語』のガンダルフ役を長年熱望してたらしいから、
(ピーター・ジャクソンによって映画化された時は高齢のため諦めたらしいけど)
温かみのある役を、とても嬉しそうに演じていると感じてしまった・・・。
スコセッシらしい深みのあるドラマのシーンでは3Dの薄っぺらさが邪魔で邪魔でイライラしたけど、
駅舎という舞台背景、歯車のまわる独特のアナログな機械仕掛けの面白さを
音響とともに味わえたのはよかったと思う。そう、カチャリ、カチャリというあの音。
おじいちゃんの膝の上で(ハリス・ツイードみたいな膝かけ毛布にくるまって)、
ホットミルクを飲みながら飛び出す絵本を読んでもらったような気分になった。
つい先日DVDも出たみたいだから時間があればまた観たいと思う。


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by EKreidolf | 2012-10-10 23:47 | 映画
2009年 12月 21日

雪むすめ・スネグーロチカ

 クリスマス前に急いで更新。

 風邪っぴきの次女が今頃ロシアアニメのチェブラーシカにはまったのでよく観ています。
彼女が好きなのは、ワニのゲーナと悪戯なシャパクリャクばあちゃん。
数年前に長女もそういえばよくみていたのですが、
ワニのゲーナのアニメーターが若かりし頃のあのユーリ・ノルシュテインだと気付いたのは最近。
そんなわけでまた、ロシアアニメに注目。



この寒い時期、ロシアの有名な童話はいくつか脳裏に浮かぶけれど、
あんまり知られていないこんなお話。
白鳥にのってあらわれる春の精と氷爺(ジェド・マロースと呼ばれます:サンタ・クロースとの説あり)との間に16年前に生まれた美しい雪むすめ、スネグーロチカの悲しい恋の顛末記

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by EKreidolf | 2009-12-21 20:45 | 映画
2008年 12月 16日

おしらせ

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みなさまお元気ですか?
今度は鼻かぜひいちゃいました・・・
どうぞみなさまはお風邪など召されませぬよう暖かくしてお過ごしくださいませ。
18日の木曜日、衛星放送ですがフランソワ・トリュフォーの映画『華氏451』が放映されるようです。
よろしければごらんくださいませ~。
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by EKreidolf | 2008-12-16 22:54 | 映画
2008年 11月 12日

夜深沈に想う~さらばわが愛、覇王別姫~

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 先日、テレビで放映された『さらばわが愛~覇王別姫』をやっと!観ることができました。
1920年代から70年代後半にかけて中国がたどった激動の歴史を背景に、
京劇の世界の中で繰り広げられる主人公たちの愛について語るドラマ。

 妓楼住まいの母から捨てられて京劇の世界に入ることとなった主人公・豆子。
その新入りの豆子をかばい見守る先輩の石頭。
厳しい京劇の修行を耐えしのぶうちにいつしか豆子には石頭を慕う深い愛が刻み込まれ・・・。

 その二人が演ずることとなった<覇王別姫>。
楚の王、項羽とその愛人虞姫の悲劇的な最期を描いた劇中劇。

虞美人の歌う歌
~わたしは女としてうまれ、もとより男ではない~

少年期の記憶は、サンザシの飴がけの思い出とともに脳裏に深く刻まれてしまったようです。
この台詞が虞姫を演ずる主人公、程蝶衣の悲しい運命を表しています。
この劇が当たり役となり彼らは念願の売れっ子役者となりますが、
彼の愛する段小樓は菊仙という妓楼の女性を妻として迎えてしまうのです。
母親のような深い愛情で段小樓をつつみこむ菊仙。

文化大革命がこれほどまでに中国の人々に恐ろしい傷を残し
文化のみならず人々の心を崩壊させたのだということを初めて知りました。

 京劇の世界を舞い歌う程蝶衣は、中国という果てしなく広い大陸に
吹きすさぶ砂嵐の上を舞う儚い蝶のごとき悲しい美しさでした。
もうこの世に、あの抑制された美しい所作で程蝶衣という激しくも儚い男優を演じきった
レスリー・チャンという偉大なる才能がいなくなってしまったことを考えると、
彼の存在の喪失を悼みます。


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by EKreidolf | 2008-11-12 13:39 | 映画
2008年 11月 06日

To Kill a Mockingbird



 アメリカ国民の選ぶ真のヒーローは・・・

 2003年のアメリカ映画協会の調査後の発表によると、
1962年の映画『アラバマ物語』の主人公、
グレゴリー・ペック演ずる弁護士のアティカス・フィンチがそのヒーローに選ばれたそう。

 スーパーマンでも007でもなく、インディ・ジョーンズでもなく、
あの無罪の黒人青年のために勇気を持って立ちあがったアティカス・フィンチを
彼らが選んだのに正直、驚きました。
しかし広い国土や経済力、軍事力といったことでなく、
真のアメリカの豊かさを感じさせてくれる映画であっただけに、
これからのアメリカの復興からは、目が離せなくなりました。
この映画の原作が描かれたころには
誰がアメリカの大統領として黒人男性が選出されると夢見たでしょうか。

映画は利発で勝気な少女スカウトの回想として、
ややノスタルジックなスタイルをとって語られています。
実は発言力を持つ人々の荒んで身勝手な内面をさらけだし、
虐げられていた人々の中の脈々たる温かさを描いているこの作品。
グレゴリー・ペックの静かだけれど温かみあふれた演技とともに心に残る作品です。

オープニングのこの映像は彼女の兄の大切にしている箱・・・
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by EKreidolf | 2008-11-06 11:08 | 映画
2008年 08月 30日

無藝荘(むげいそう)

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ここ蓼科高原は、小津安二郎監督ゆかりの地。無藝荘が残されています。
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もともと小津監督を蓼科に招いたのは脚本家の野田高悟氏のよう。
来客の接待のために飲みすぎる小津監督の身体を心配した母あさゑさんが、こっそり野田氏に正月、蓼科に連れて行ってくれと頼み込んだのがはじまりだそうです。
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入口にはこんなエピソードも。
子役の使い方の上手だった小津監督、秘訣を聞かれて
「はじめににあったときに子供のチ○チ○をつかんでやることだね。
そうしたら全部うまくいく。」
なんて答えたのだそう。
繊細な画面づくりからは想像できなかった豪胆ぶりですね。

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by EKreidolf | 2008-08-30 12:43 | 映画
2008年 03月 06日

パリ・ノスタルジー

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エッフェル塔から望むシャイヨー宮。 

ナポレオン三世と知事オスマンによるパリの大改造・・・。
今回の旅では第二帝政時代、そしてパリ万博での建造物に想いを寄せました。
旅の興奮さめやらぬなか、kcoucousさんに教えていただいた映画<ロング・エンゲージメント>を鑑賞。(kcouscousさんに深謝!)
今や失われてしまった20世紀初頭のまぼろしの建造物がつぎからつぎへと・・・背景として登場(ジュネ監督の趣味?)し、もはや存在せぬ空間にタイムスリップ。

現在、シャイヨー宮が建っているこの場所、1878年のパリ万博でトロカデロ宮というセヴィリヤの宮殿を模したアラブ風の建物が建っていたそうな。
しかし、悪趣味だとパリジャンに嫌われて、1937年の万博の際に取り壊された、とのこと。(映画ではオドレイの後方にエッフェル塔が見えるシーン、
ちんまりとエッフェル塔の下にトロカデロ宮が鎮座ましましています。)

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繊細な装飾に目を奪われるエッフェル塔。
1889年のパリ万博の記念碑となる塔の建設のため、
一時は、大理石の太陽の塔を建てる案も検討されたようですが、膨大な費用と日数がかかることからギュスターヴ・エッフェルの案が採用されたとか。
当初、エッフェル塔もパリジャンに不評でしたが、こうして残ってくれたことに感謝。
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シャイヨー宮からのエッフェル塔。
アポリネールは空の恋人と讃美。
2月の風は身を切るように冷たかったのだけれど、間近でみるとやはり迫力の美しさ。

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by EKreidolf | 2008-03-06 23:33 | 映画
2008年 01月 16日

ぼくの好きな先生

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煙草を吸いながらいつでも つまらなそうに
煙草を吸いながら キャンバスに座ってた
ぼくの好きな先生
ぼくの好きなおじさ~ん♪

煙草と絵の具のにおいの あの部屋にいつもひとり
ぼくと 同じな~んだ 職員室がキライなのさ
ぼくの好きな先生
ぼくの好きなおじさ~ん♪
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と、思わず忌野清志郎さんのフォークを口ずさんでしまいそうですが
冬ごもりのつづく(次女、水疱瘡・・・)こんな時期に
ほっこりみたくなる映画を思い出しました。
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と、いうのも以前この映画をみたとき、その大自然に囲まれた小学校の温かさに
心うたれたから。
同時にちらちらと雪の舞う冬景色の美しさも印象的だったのでまた観たくなってしまったのです。

フランス中部のオーベルニュ地方の小さな小学校が舞台。
たった1つの教室で3才から11才までの子供たちと1人の先生の織りなす生活と対話。
残り半年で教師人生に幕を閉じることになっているロペス先生の
落ち着いた生徒との接し方は、幼い子どもの伸び行く芽をゆったりと包み込むよう。
これ以上ないくらい、静かな、そしてゆっくりとした時間の流れる映画は
温かで香り豊かな紅茶のように心に染み入って、幸せなひとときに包まれます。

なんとなくうとうとしたくなる、冬の陽だまりの午後に。
監督はニコラ・フィリベール。

冬の子ども・・・
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by EKreidolf | 2008-01-16 16:16 | 映画
2007年 11月 14日

斬る


 肌寒くなってきたこの季節。
小さな生き物たちはどうしているだろう。
きりのなかのはりねずみは無事こぐまのおうちにたどりつけたかなあ。
小動物に思いがいたると、ついこの方のかわいらしさにも出会いたくなります。
そう♪東野栄治郎氏。


ハードの空き容量が限界に近づいてきたので、68年の岡本喜八監督の『斬る』を鑑賞。
のっけから、上州のからっ風が吹き荒れる劇画調タッチで目を釘付けにされました。

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ヤクザもんの抗争で、荒れ果てた宿場に武士志望の農村出身の荒くれ男がやってくる。
そこで出会った無宿者と、ふたりはひょんなことから武家の騒動に巻き込まれ・・・という作品。
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主演の仲代達矢氏はまるで舞台劇でも観ているかのような芝居のうまさで、観ていて安心なんですが、その周りの登場人物も、実にクローズアップを多用して、魅力的に描いています。
力がありあまって人がよく、土のにおいのする大男も、高橋悦史氏がホットに好演しているし、自分の武士としてのおかれた立場を忠義に果たそうとする中村敦夫さんも素敵。
武家に雇われた素浪人の隊長を演じた、岸田森さま!もクールで寡黙な佇まいがたまらない、そして美しい太刀まわりが、う~ん、これこそ新しいチャンバラ映画の醍醐味、と観ていてうれしくなっちゃう。
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 その志が藩の陰謀に利用されて運命を翻弄される若武者たち・・・こ・これはまさしく山本周五郎の世界~と、思ったらやはりこれは山本氏原作<砦山の十七日>を岡本監督らが脚色したものだそう。

そ・そして、家老のひとりを演じた東野栄治郎!この作品がベストなかわいらしさではなかろうか・・・。
ラスト近く、女郎屋から、「わしゃ、こんないいところからは出んぞ~」と高らかに笑うところは格別のかわいらしさ~~(失礼ですが)。
主役のかっこよさとはまた別に、脇役の魅力をここまで引き出した岡本監督。演ずる役者さんたちも役者冥利に尽きたのではないかしら・・・。

と、しばらくしたところで、黒澤明監督の『用心棒』も鑑賞。
むむっ!!これは岡本監督の『斬る』にそっくりではないか~
《世界のミフネ》の魅力は確かに素晴らしく、主人公桑畑三十郎の放つオーラに
しばし酔いしれてしまう・・・。しかし主役が重傷を負いながらも敵を討つところ、
宿場町の荒れ果てた様子など、見事によく似ていて、
これでは岡本監督が黒澤作品の真似をしたといわれても仕方ないかも・・・。
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三船さまの魅力には抗いがたく、ストイックな映画の美しさという点では『用心棒』が受けるかもしれません。先にこちらが観たかった・かも。
ですが、岡本監督のちょっぴり劇画チックな『斬る』もやはり大好きな作品です。

邦画のなかでは黒澤監督の『生きる』が大好きなわたし、
あまりにも好きなんで他の黒沢作品は敬遠してましたが、やっぱりすごいですね。

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by EKreidolf | 2007-11-14 11:43 | 映画
2007年 11月 07日

パトリック・モディアノ

 先日la kengさんとの会話にでてきた<ルシアンの青春>
巨匠ルイ・マル監督の1973年の仏映画。

時代は第二次世界大戦末期。
田舎育ちの粗野な荒削りの青年、ルシアンがたどった青春を描いてます。
ルシアンは無教養と無鉄砲さゆえに、知らず知らずのうちにフランス・ゲシュタポに協力し、
ともに活動するはめに陥ります。
しかしユダヤ人女性に恋をしてしまい・・・。
俳優でない、実際の素人の田舎の青年・ピエール・ブレーズが演じていることで、
リアリティがでて緊迫感あふれる時代に生きた若者をしのばせています。

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最近の仏映画のこういったジャンルは重苦しいものは少ないように感じるのですが、
この映画では青春のもつ苦々しさと無知による無鉄砲さが美しいフランスの風景を背景に
描かれていて、さすが、ルイ・マル。

子どもが中・高校生くらいに大きくなったらこの作品はぜひみせたいと思ってます。
若いとき、そして年をとってから観た感想はかなり異なったものになりそう。
ヒトラーの秘書をかつて勤め、無罪となった独女性が
「若いからといって許されるわけではない。
きちんと目を開けていれば見えて来た筈なのだ。」

と懺悔の思いを語っていましたが、その言葉はルシアンにも、
そして今を生きる私にものしかかります。
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脚本をかいたパトリック・モディアノはフランスを代表する作家のひとり。
自らがフランス系ユダヤ人であったこともあり、
こうしたユダヤ人迫害をテーマにしたすぐれた小説も数冊世に出しています。
また映画の脚本家としてもパトリス・ルコントの<イヴォンヌの香り>や<ボン・ヴォヤージュ>などで知られています。

また絵本。(っていわないでね。)
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by EKreidolf | 2007-11-07 12:12 | 映画